ベトナムには54も少数民族がいるって知ってる?多民族国家としてのベトナム

ハザン省中心部のマーケットに集うモン族の人々

あまり知られていないことですが、実はベトナムは54もの民族を持つ多民族国家です。

彼ら54民族は、それぞれ独自の文化を持ち、独自の言語までも持つ独自の文化を持っているんです。

ベトナムの公用語であるベトナム語も、世界一美しい民族衣装として話題に上がることの多いアオザイも、実はベトナムの大多数を占めるキン族という1民族の言葉であり、民族衣装にすぎないんです。

最大派キン族と53の少数民族

ベトナム政府の発表によると、現在ベトナムには全部で54もの民族がいるとされています。

現在は学校教育などによって、少しづつ同化はしているものの、彼らはそれぞれに固有の文化、異なる伝統、習慣を持っています。

ベトナムの民族衣装と言えば、世界一美しい民族衣装と評判も高い「アオザイ」が有名ですが、このアオザイももともとはベトナムで最大多数を占めるキン族の民族衣装。

ホイアンなど中部ではアオザイを着た学生を見かけることが多い

ホイアンの町をアオザイを着て歩くキン族の女子学生達

少数民族の人たちが身につける民族衣装は、それぞれ見た目も形も大きく異なっています。

ハザン省の少数民族ザオの老人と孫

ザオ族の老人と孫

数ヶ国語を話すロロの少女

ロロ族の少女(2017年)

このように少数民族の文化は、いわゆるベトナムの文化とは大きく異なっているのです。

少数民族の人々はどこに住んでいるのか

ホーチミンやハノイなど平野部にある大都市に住むベトナム人の多くはキン族の人々。少数民族の人たちは、北部や中部域の山岳地帯に多く住んでいます。

これは少数民族の人たちが、元を辿ればキン族との耕作地を巡る争いに破れ、山岳地帯に追われた人たちの先祖だからと言われています。

険しい山々が多く、ともすれば外の社会と断絶しがちな環境があったからこそ、独自の文化が生まれた一方で、山岳地帯には耕作可能な土地も乏しく、今も貧しい暮らしをしている人が多いのです。

 

荷物を背に歩く少数民族の女性

荷物を背に歩く少数民族の女性

 

ベトナム語が話せないベトナム人?

少数民族と出会える町として有名な町に、ハノイから5時間ほど北に行ったところにあるサパという町があります。

そのサパでベトナム人の友人と村巡りをしている時、立ち寄った村でこんなことが起こりました。

少数民族であるモン族の人々に友人はベトナム語で話しかけたのですが、「ベトナム語はわからない、英語で言ってくれ」と返答されたのです。

このようにサパ周辺に住む少数民族の人に中には、話せるのは自分たちの言語と、外国人相手の仕事をする上で役に立つ英語という人もいたりします。

これは彼らが、自らのコミュニティの中で生活を完結させることが多いから。彼らにとって自分たちの客になることもなく、関わることの少ないベトナム語(キン語)を学ぶ理由はほとんどなく、英語を学ぶ方がずっと生活の為になります。


英語を話す黒モン族の少女

このように 国籍上はベトナム人であっても、ベトナム語を喋ることができない人もいる。これもベトナムの少数民族なのです。

 

伝統言語を使い続ける少数民族モン族

伝統衣装を身につけて山岳地帯を歩くモン族の子供

伝統衣装を身につけて山岳地帯を歩くモン族の子供

 

このように独自の言語を持っている少数民族の人々ではありますが、時代の流れと共にこうした言語は少しずつ失われつつあります。学校教育が行き届き始めたこと、民族間の交流が盛んになったことで、独自の言語を流暢に話せるのは高齢の世代だけとなった民族も珍しくない。

そんな中でもモン族は広い世代間で自分たちの独自の言語である「モン語」を維持し続けている民族の一つ。

特に険しい地域に住むモン族の中には、若い世代であっても国としての共通語であるベトナム語(キン語)を話せない人に出会うこともある。

これはモン族がベトナムだけでなく、タイ北部やラオスなど、様々な国の山岳地帯を跨って住んでいる民族であることが関係しているともされています。

国家を跨って住んでいる彼らにとって、国家というものはとあくまで自分とは関係ない政府が勝手に決めたもので、帰属意識はアイデンティティーはコミュニティに依存しているというのです。

一口に「少数民族」とは言えない多様な文化

その他にも鮮やかな民族衣装を着て、語学に堪能なロロ族や押しの強い商売で知られる赤ザオ族など、民族ごとに文化も伝統、民族性までもが異なっている。

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このモン族にしても、黒を基調とした色あいの服を着る黒モン族や、鮮やかなカラーリングの服を着る花モン族とに分かれており、「少数民族」と一口には決して言えない文化の多様性があるのです。

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少数民族の人々の数

人口の86%を占めるキン族に比べ、少数民族の人々は圧倒的に人口は少ない。ベトナムで二番目に大きいタイ(Tay)族でも人口は160万人ほどと、全体の2%ほど。

民族の旗を落ち更新するタイ族の男性

ハノイとダナンの中間に位置するグアン省に住むオードゥ族(Ơ Đu)に至っては、370人ほどしか存在していない(2013年の統計による)のです。

ベトナム少数民族と差別

都会のベトナム人、そして田舎の少数民族の人々両方と関わってみても、少数民族であるからというような理由での差別は比較的少ないようではあります。

しかし少数民族の中でも、さらに人数の少ないの少数民族の高齢者の中には、少数民族の中でも数の多いモン族などを敵視する発言をする人に出会うことはあった。

ただ若い世代の間には民族館の対立はほとんどなくなっているようで、IDに民族名が記載されているため、自分が何族であるかについては認識しているものの、話のネタとして使ったり、冗談でからかいあったりする程度。本気の対立とはなっていないようです。

 

一方で貧しいことは蔑みの対象となるため、結果として貧しい人が多い少数民族を見下した態度をとる人間がいないわけではないようです。

失われつつある伝統

しかしこうした伝統文化も少しずつ失われつつあるのも事実だ。

若者たちの間では、自分の民族の言葉を1単語も知らないという人も少なくない。ベトナムの教育制度では多民族が混じって勉強し、授業はベトナム語で行われるため、よほどの山奥でない限りは誰にでも通じるベトナム語を学ぶ方がメリットが大きくなっているからだ。

また少数民族の人々が住む地域には、水道や下水、ガスなどのインフラを飛び越えて電気やインターネットなどが整った村などもある。水を川に汲みに行き、料理に使う薪を拾い集めるという生活をしながらも、夜はスマホでネットをして過ごす、日本人から見れば不思議な生活環境で過ごしている人が少なくないのだ。

モン族の村、農村の中に電線が走る

モン族の村、農村の中に電線が走る

また電気が通ったことで、テレビや冷蔵庫などを使うようになり、それらの購入費や電気代などを支払わなければならなくなった。ネットを通じて見た外の世界のとのギャップに、貧困を意識しだしたものもいる。こうした環境で育った若者達の中には、ネットで見聞きしたより”豊かな”環境を求めるものがいることを攻めることはできないだろう。

都市部の急速な発展もあり、地元では仕事ができなくても、都会でならば建築労働者や工場での仕事もある。

貧困から抜け出すため、家族に楽な生活をさせるため多くの人が故郷を出るという選択肢を選ぶものもいる。それが文化の衰退を招いているのです。

最後に

日本人である我々からすれば、「ベトナム人」と言われるとつい単一の民族で同じ言葉を話す人々だとおもいがちです。

しかしベトナムは54もの固有の文化と伝統を持った多種多様な文化が集まってできた多民族国家でもあるのです。

多数の少数民族が集うハザン省の市場

多数の少数民族が集うハザン省の市場

しかし時の流れと共に、そうした伝統的な文化や生活が失われつつあるのも事実。

自分の家族に楽をさせたいというのは当然の感情であり、人は誰でも自分の生きたい人生を選ぶ権利がある。これは止められない流れであり、止めようとするのはエゴでなのでしょう。

険しい山々が生み出した多くの固有の文化伝統は、興味を誘うものだ。消えつつある文化を目に焼き付けられるのは、今しかないのかもしれません。

少数民族の文化を感じたい人はどこに行くべきか
ベトナム旅行で少数民族と出会う旅をしたい場合。サパとハザンという二つの選択肢があります。

サパは観光地化されて長く、ホテルなどの設備が整っている一方で、ハザンはまだ開発途上であり交通の便や観光地化などは不十分である現状があります。

そのため少数民族は目にしたいが、滞在の間はホテルなどで快適に過ごしたいというような人であればサパを。

より昔のままに近い、少数民族の人々の素朴な生活を目にしたいという場合はハザンを訪れることをおすすめします。

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