ベトナム

ベトナムの恋愛市場(ラブマーケット)ってなんなのさ?少数民族の奇祭を見てきたよ

文化や風習はもちろん、恋愛感覚というのも国によって違うもの。

比較的カジュアルな日本に比べて、割とシリアスな人が多いベトナムなど日本とベトナムの恋愛感覚も結構違っています。

しかしそんなベトナムの中でも、1日だけ不倫が許容され、なおかつそのことを夫婦間で触れては行けない風習がある地域があったと言ったらどう思うだろう?

ベトナムの最北部ハザン省の山奥で、今もその風習。ラブマーケットが行われていると聞きつけました。

今回はそんなラブマーケットの現状を一眼みるため、ベトナムの最北部ハザン省のさらに奥の奥、Khou Bay(コウバイ)地区を訪れたお話です。

ラブマーケットはどうして始まったの?

ラブとマーケットが並ぶと、なんとなくちょっといかがわしいイメージが沸くかもしれないのですが、ハザン省のラブマーケットは実は少し悲しい歴史があるイベントです。

どんな行事かをお話する前に少しその成り立ちを紹介して行きましょう。

部族も違い、貧富の差もある恋人たち

昔、昔ハザン省の山奥にバーとウットという恋人たちが住んでいました。

同じ村に生まれ、幼い頃からお互いをよく知っている二人の愛情は深く。年頃になると彼らは半ば当然のように結婚を考えるようになりました。

しかしこの二人の仲を家族はよく思ってはいませんでした。ヌン族出身のバーは楽器や歌などの才能に恵まれたハンサムな少年でありましたが、ひどく貧しい家庭の出身でありました。

対するウットの家はと言えばザオ族の良家の出身です。村の誰もが彼らは釣り合わないと考えていたのです。

二人が結婚したいということを明らかにすると、二人の家族は当然のように結婚に猛反対を始めます。家族の祝福を受けて結婚することなど、到底不可能なことを二人は知ったのです。

駆け落ちを決めた恋人たち

「逃げましょう、あなたと一緒にいられるならどこでもいいわ」

「逃げよう。君と一緒にいられるどこでもいい」

二人はそう決めると、村から逃げ出し、高台にある洞窟に住むことに決めたのです。

二人が住むことに決めた洞窟は、村からさほど遠くない高台の上。そこからは村の人々の営みも目にすることができ、彼らは自分たちが村にいた時のことを思いながらも、二人で幸せな時間を過ごしていたのでした。

民族で村を二分する争いへ

しかし二人の幸せな日々はそう長くは続きません。

ある日のこと、二人がいつものように過ごしていると、外がどうにも騒がしい。

二人が崖下を見下ろすと、武器を手に村の人々がお互いに争っている光景が目に入ってきたのでした、

しかもよく見れば村はヌン族とザイ族とに別れて争っている。二人はその瞬間、二人の駆け落ちをきっかけに両家の対立が深まり、それが民族同士の対立へと繋がってしまったことを察したのです。

二人が自分たちの愛情優先した行動が、周りの人々を傷つける結果になってしまった事実は二人を大いに苦しめることになりました。

でもこれ以上自分たちのせいで傷つく人が出るのは耐えられない。二人は引き裂かれるような思いに悩まされながらも村に戻り別々の道へと進むことを決めたのです。

1日だけ再会できる日を設けた

二人が村に戻ったことで争いは収束へ向かいます。

ウットはバーとは引き離され、親も認める良家へ嫁ぐこととなりますが、せめて1年に一度だけバーと会わせてもらえるのなら、とこの話を受け入れることを決めます。

二人の繋がりの強さを知っていた家族は、ウットの希望を受け入れしぶしぶ受け入れました。その日が二人が共に逃げた太陰歴の3月27日だったのです。

二人は別々に暮らしながらも、その日だけは共に過ごし次の日には日常に戻るという生活を続けていました。

しかし数年後、彼らはこの二人が一緒にいられる3月27日に同時に命を落としました。

二人がなくなった理由については伝えられてはいません。しかし同時に命を落としたという話から二人が自ら命を絶ったのではと考える人もいます。

しかし村の人々は、愛し合いながらも一緒になれなかった恋人たちの死を深く悲しみ。彼らがなくなったこの日に、かつての恋人たちと再開することができるCho Tinh(ラブマーケット)を開くことにしたのです。

ラブマーケットとはなんなの?

このようなお話が元にあるため、ラブマーケットはハザンに住む少数民族の人たちが、彼らが1年に1度だけ再会を許され、そして命を落とした太陰暦の3月27日にかつての恋人たちと再開できる場所として開かれるようになりました。

かつてこの行事が行われていた日には、時に夫婦が揃って訪れ、それぞれが恋人たちと再会。二人で1日を過ごしたあと、翌日には夫婦揃って何事もなかったかのように家に帰るなんてこともあったんだとか。

しかもこの場で起こったことは、その場限り。あとで触れてはいけない、なんて決まりがあったようなんですね。

現代のラブマーケットはどんななの?

さて本来は少数民族の元恋人たちが集う場所であったというラブマーケット。

ただ2019年の現在ではラブマーケットを訪れてみると、少数民族の人たちが集まるイベントというよりは大都市圏のベトナム人の人たちが少数民族の文化に触れるイベントとしての側面がかなり強くなっているようでした。

特に初日には大きな舞台が設置され

少数民族の衣装をきての伝統舞踏が行われるなどお祭り騒ぎ。特にこの日はベトナムの祝日と重なることもあって、ものすごい人手です。

昼間は多少少数民族の人たちが増えるとはいえ、凄まじい人の波。

地元の人に話を聞くと、

「元カノ?会えたらデートするさ。まぁ、見つけられればね」

と笑っていましたが、まさにその通り。実際現在でも、伝統は伝統として許容されているようですが、この人並みではかつての恋人を探し出すのは相当に困難。

かつては元恋人を連れて帰るための使われた馬も、今では記念撮影のための小道具となっていた

 

マーケットでは大企業の商品サールスや、料金を支払って馬に乗って撮影体験など、かつての恋人たちの逢瀬の場は商業主義に飲み込まれているようでした。

マーケット近くの丘の上で佇む女性。かつての恋人の影を探しているのだろうか

出会いの場としての側面も

ただイベントが大きくなるにつれ、このラブマーケットは山がちで出会いのない地元の人たちにとっての出会いの場のような要素もできているのは確かなようです。

出会い、とは言っても大人というよりは子供たちのもの。

なんとなく声をかけたくても、かけられない微妙な距離感が可愛らしい。

実際今の10代で結婚、出産することが多いこの地域ではこのくらい若い時期でも本当に将来を意識した出会いの場なのかもしれません。

まとめ

文化や身分の違いから、無理やり別れさせるようになった二人の恋人から始まったラブマケット。

かつての恋人と1日限りの日を過ごすという、かつての伝統は消えてしまったようだけど、恋愛市場という言葉通りの意味も持ち始めてきたようでした。