ベトナムの宗教とは何か知っているでしょうか?
現在、公的に認められている宗教は仏教、カソリック、プロテスタント、これに少数のイスラム教やヒンドゥー教、これに新興宗教であるカオダイ教、ホアハオ教と呼ばれる宗教が続きます。
この中でベトナムでは習慣的にお寺に行く人も多いことから、ベトナムの8割が仏教徒と言われることもあります。
しかし実際にベトナムの人々と共に暮らし、その生活に触れてみると本当に大多数を占めると言えるのは、こうした他の国でもメジャーな信仰ではなく、独自の文化と結びついた民間信仰だと言うことがわかってきました。
今回はベトナムの民間宗教とはどんなものか触れると共に、ベトナムにおける宗教事情について見て見ましょう。
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ベトナムの民間信仰とはどんなものなのか
ではベトナムの民間信仰とはどういったものなのでしょう。
ベトナム語で精霊とか神などを意味するthầnと言われるもののほか、自分たちの先祖や土地神、地域に置ける英雄などに祈りや感謝を捧げる信仰。キリスト教の唯一神を信仰する類のものではありません。
他の宗教も許容するその性格からか、仏教とも綿密に関わっているといえて、民間信仰を信じている人でも日常的にお寺を訪れています。
しかし仏教寺院を訪れているベトナム人に「仏教徒」なのかと尋ねると、おそらく口ごもる人も多いでしょう。これは仏教徒と言えるほど敬虔に仏教を信じている人は稀で、多くの人が民間信仰と仏教、そして無信仰的な考え方を合わせたような感覚を抱いているからなのでしょう。
実際、ベトナム政府による2014年の調査ではベトナムの人口のうちおよそ73.2%が、無宗教またはこの伝統宗教を信じているとしていますし、アメリカの調査機関による報告でも、伝統宗教を信じていると言ると答えた43%と、無宗教であると答えた30%の数を足すとだいたい同じ数字になります。つまりベトナムの総人口の75%以上の人たちが自分が何かをはっきり信仰しているとは言えない曖昧な宗教感覚の中に生きていると言えそうです。
ベトナムが仏教国などと言われながらも、クリスマスもイベントのようにして根付いているのも、そうした理由から。他の宗教の神もなんとなく自分たちの文化に取り込めてしまう、これは八百万の神を信仰する神道とも持つ日本人とも近い感覚なのではないでしょうか。
ベトナムの家庭にある四つの祭壇

ベトナムの伝統信仰を表すものとしてよく見られるものに、ベトナムの家庭、店やホテルなどでも見られる祭壇があります。
これは各部屋ごとに神様やご先祖様、早くになくなった親族などそれぞれ役割が違う祭壇を置くというもの。

例えばベトナムにおいてお店やホテルなどを経営している家庭を訪れると、玄関の近くに小さな50センチほどの高さの小さな祭壇が置かれているのが目に入ります。この祭壇は商売繁盛を祈念して置かれているもので、日本でいう福の神のようなものが祀っています。
こうした祭壇は一般の家庭では玄関横の福の神の祭壇のほか、最上階の先祖を祀った祭壇、台所に家族繁栄の祭壇が置かれ、不幸にも若くして亡くなった家族がいる場合には玄関の外、少し高い位置にその人を祀った祭壇が置かれています。
ベトナムの仏教
単一の宗教として最大なのは、仏教で全人口の12%が仏教を信仰しているとされています。
ベトナムの仏教で大多数を占めるのは日本と同じ大乗仏教。タイやラオスなど東南アジア諸国でメジャーな上座部仏教とは違う歴史経過を辿っています。
ベトナムに仏教が入ってきたルートには諸説あり、紀元前3世紀から2世紀頃にインドから入ってきたという説と、1、2世紀ごろにかけて中国から入ってきたという説とがあります。

ベトナムの仏教は近代史においては弾圧の対象になってきました。南北分断時にはキリスト教化を進め仏教の弾圧を進めた政府に抗議した僧侶による焼身自殺も起きたほどでしたし、社会主義国家になってからも国家的なイデオロギーから宗教の弾圧の影響を受けてきました。
しかし民族的な伝統とも強く結びついている仏教が根絶されることはなく、今でもベトナム国内には1000万人を超える仏教徒がいるのです。

さきほど言ったように仏教と伝統信仰は伝統的に密接に関わってることから、その堺が曖昧な部分もあり、仏教徒の家庭にも伝統信仰の祭壇が置かれていることも少なくありません。
仏教徒であると公言する人が、そうでない人に比べて何が違うと言えば仏教との関わり方でしょう。彼らは他のライトに仏教と関わっている人に比べ、仏教の戒律をしっかり守っている人だと言えます。
ベトナムの菜食主義
食事に関しても肉を食べないという仏教的な戒律にしたがった菜食主義。
ベトナムは世界で7本の指に入るほど、痩せた女性が多い国だと言われていますが、その理由の一つがあえて肉を食べない菜食主義の人が多いからだなんて言われます。
実際仏教が盛んで敬虔な信者も多い中部の都市「フエ」では、連日ベジタリアンレストランは盛況。
肉を食べない日と定められている旧暦の1日、14日、15日、30日(月の最終日)などは座る咳がないほどの混み具合になっています。

新興宗教カオダイ教
ベトナムに本部をおく新興宗教。カオダイ教はこのベトナム伝統宗教を中心としつつ、さらにほかの宗教も取り入れたものとです。
現在では信者数ではカソリックに注ぐベトナム第3位の宗教となってるカオダイ教は、巨大な目玉の元にキリストやブッダが並ぶという独特な宗教感を形成しています。
ベトナムの宗教感とは
これに対し宗教に対する関心や、関わり方が深く強いのが残り25%ほどの人たちということになります。
イベント時期にのみ宗教施設に訪れる一般の人々とは違い、彼らは宗教に経験に取り組んでいます。
ベトナム政府の調査によると
もっとも多いのが仏教で12.2%、二番目に多いのがカソリックの6.8%。カオダイが4.8%、プロテスタントとはオホア教がそれぞれ1.5%、1.4%で後に続き、わずかなヒンドゥー京都やイスラム教徒がいると言う結果担っています。
ベトナムのキリスト教

首都であるハノイに大聖堂があることからもわかることですが、ベトナムではキリスト教も盛ん。
宗派ではカソリックが6.8%と最も多く、プロテスタントがそれに続く1.5%となっています。

フランスの占領下にあったことから、キリスト教もフランスから伝わったものと思いがちですが、ベトナムにキリスト教がもたらされたのは16世紀のこと。ポルトガルの宣教師の手によるものとされています。
その後カソリックの司祭が、フエ王朝の初代皇帝初代皇帝ザーロンのアドバイザーなどになったこと、ベトナムがキリスト教徒であるフランスの植民地支配を受けたことなどを受け、キリスト教は勢力を伸ばしました。

南北分断時。南ベトナム大統領がキリスト教徒だったため、仏教の弾圧が行われました。その結果起こったのが有名なティック・クアン・ドック僧の焼身自殺だったりします。
ベトナムの新興宗教
ベトナムにはカオダイ教、ホアハオ教の二つの新興宗教が信者数を増やしています。どちらもベトナム南部メコンデルタ地帯を中心に発生しました。
特に巨大な「目」を信仰するカオダイ教の信者はベトナム本国だけでなく、アメリカなどに住む現住ベトナム人コミュニティの間でも広まっていて、信者数はベトナムの全人口の5%ほどにも及ぶと言われています。
ベトナムの少数派宗教
17世紀以前、現在のベトナム南部はベトナムではなく、チャンパと呼ばれるクメール系の国であったと言われています。

ベトナムのヒンドゥー教
彼らの信仰していたのはヒンドゥー教であり、今もその子孫である一部の少数民族の間ではヒンドゥー教が信仰されていると言われています。

ベトナムのイスラム教
また移民などを中心にイスラム教人口もあり、ハノイなどではモスクなどもあります。しかしヒンドゥー教にしろイスラム教にしろ、その人口は全人口の0.1%以下であり、宗教的には極めて少数派となっています。
まとめ
ベトナムの人の宗教との関わり方は日本人とも少し近いものがあると感じます。
彼らは節目には仏教寺院を訪れ、家庭では家族や先祖を信仰する一方で、クリスマスにはイベントとしてクリスマスを楽しむ人もいます。
ベトナムを訪れ、現地の人々と触れ合った時、日本人と近いなと感じる人も多いと言います。
これはこうした宗教を宗教としてだけとらえず、伝統や文化として考える人も多くいる、そんな感覚を共に持っている人が多いというのが影響しているのかも知れません。